ピアノの練習は「根性」より「脳トレ」。初見演奏で身につく一生モノの読譜力

「ピアノの前に座り、母に見守られながら自力で楽譜を読み取ろうとする子供。初見演奏による自立と脳トレをイメージした写真」




ご自宅の練習、いつも保護者の方が横について教えていませんか?

お子さんにピアノが弾けるようになってほしい!という思いから、お忙しい中で練習をサポートされている熱心な保護者がたくさんいらっしゃいます。

ただ、長年レッスンをしていて感じるのは、あまり手を貸しすぎてしまうと、お子さんが「誰かいないと読めない……」と不安になってしまうこともある、ということです。

そこで、フラッシュカードの音符読みを卒業した初級の生徒さんと、レッスンで毎週行うのが「初見演奏(初めての楽譜をその場で弾くこと)」です。

長年お子さんたちの成長を間近で見守ってきて、この初見演奏には3つの嬉しい効果があると実感しています。

  • 「楽譜アレルギー」が消え、一人で宿題ができる(自立)
  • 「自分の力で読めた!」という自信がつく
  • コンクールなどの長い曲にも、自らどんどん挑戦できる

お子さんが自分で楽譜を読めるようになると、練習が「やらされるもの」から「自分でするもの」に変わります。保護者の方の負担もぐんと減って、まさに一石二鳥ですよね!

レッスンの初見演奏で、大切にしている小さなお約束があります。 それは、「弾けるのは3回まで」「覚えないで、楽譜を読んで弾こうね」ということです。

実は、お子さんにとって、一生懸命に楽譜の情報を読み取るよりも、耳や指の感覚で「まるっと覚えてしまう」ほうが、ずっと簡単で楽なことなんです。

宿題の教本も、ついつい何度も弾いて「指に覚えさせて」クリアしようとする子がたくさんいます。でも、それでは「楽譜を読む力」を育てるチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。

ここからは初見演奏にこだわる理由と具体的な方法についてご紹介します。

初見演奏をすると起こる効果は?

1. 「覚える脳」から「読み取る脳」へスイッチ!

初見演奏で弾ける回数は3回まで。この回数が決まることで、脳は「覚えられないから、今、この瞬間に楽譜を読み切らなきゃ!」と、ものすごい集中力でフル回転し始めます。これは、情報の処理能力(ワーキングメモリ)を育てる最高のスイッチといわれているそうです。また、 「弾けるまで何回でも弾けばいいや」と思うと、脳がサボってしまうだけでなく、間違った動きまで覚えてしまうリスクもあるのです。

2. 楽譜を正しく読み、理解する習慣

フラッシュカードで身につけた「縦読み」と「横読み(模様読み)」を上手に混ぜて読み進めていきます。「読んで弾く」というこの小さな挑戦を繰り返すことで、「楽譜を読み解く本物の能力」が身につきます。

3. 自分の力で「どこまでも進める」ために

その場で覚えてしまうやり方は、最初は早く弾けるようになりますが、長い曲に出会ったときに、どうしても限界がきてしまいます。 お教室では、負担のないよう4小節程度の短く簡単なものから始めます。この段階から「3回で読み取る」習慣をつけておくと、少し難しい楽譜に出会っても「よし、自分で読んでみよう!」という自立心が育ちます。

成功体験を大切にする「初見演奏」3つのステップ

お教室では、お子様が「できた!」という自信を持てるように、次のようなステップで初見演奏を進めています。

ステップ1:まずは「楽譜とおしゃべり」をする

いきなり弾き始めるのではなく、まずは楽譜をじっくり観察します。 「何拍子の曲かな?」「右手から始まる?左手から?」「親指は何番の指から置くといいかな?」 こんな風に話し合いながら、「設計図」を頭の中に描いていきます。

2. ステップ2:音を出さずに「指だけシミュレーション」

次に、鍵盤の正しい場所に指を置き、音は鳴らさずに指だけを動かします。 一緒に「1ト、2ト……」とカウントをしながら、鉛筆で「今弾いている音の少し先」を指し示し、先読みをサポートします。 「あ、ここは指番号に注意だね」「休符が引っ掛けポイントだね」なんて、お子様自身がポイントに気づいてくれると、もう成功は目の前です。

3. ステップ3:いよいよ「3回勝負」の演奏へ

ここまで丁寧に準備をすると、実は1回目で完璧に弾ける生徒さんがとても多いんです!この「1回でできた!」という達成感と喜びが、大きな自信に繋がります。お教室では、できた分だけスタンプが押せる仕組みです。1回で弾けるとスタンプ2個がもらえます。「やった~!」とお子さんはもちろん、私も保護者も盛り上がる瞬間です。

もし少し間違えてしまっても大丈夫。 「次はどこに気をつけてみようか?」「もう一度、音を出さずに指を動かしてみる?」 とお子様の性格やその時の心の状態に合わせて、2回目、3回目と相談しながら進めます。

もし3回弾いても難しかったときは、「この曲は少し相性が悪かったかな。でも、ここまで読めたのはすごいよ!」と声をかけます。 初見演奏は「覚えること」が目的ではないので、あえて深追いせず、「覚えちゃう前に、次の新しい曲にチャレンジしようね!」と、常に前向きな気持ちで終われるようにします。

ゴールは「自分で楽譜が読めること」

初見演奏で身につく「いきなり弾かずに、まず楽譜をじっくり見て、頭の中で指を動かしてみる」という習慣。 これって、実は大人になっても使える「段取りの力」そのものなんですよね。

  • 「よし、まずは全体を見よう」という落ち着き
  • 「こう動けばうまくいきそう」という見通しを立てる力
  • 「限られたチャンスで集中する」という本番への強さ

ピアノの椅子に座っている5分間、お子さんはただ音を出しているだけではありません。「次は……?」と、脳みそをフル回転しています。

勉強や、将来仕事に向き合うときにも、「まずは準備をしてから、落ち着いて取りかかろう」と自分で考えられる子になってくれたら……。そんな願いを込めて、いつも生徒さんと一緒に「スタンプ2個」を目指して頑張ってます。

ですから、保護者の方も、「宿題の曲を弾けるようにしないと!」と、一生懸命になりすぎなくて大丈夫。 もし、ご家庭で何かサポートを、と思われたら、宿題を完璧に弾かせることよりも、次のようなことを優先してあげてください。

  • フラッシュカードの早読みをゲーム感覚で楽しむ
  • 初めて見る短いフレーズを「3回で読んで弾けるかな?」と一緒に面白がる

この「読み取る力」の基礎さえできていれば、お子さんは自分の力で教本もスラスラ読めるようになり、いつの間にか一人で練習を進められるようになります。

お子さんは「自分でできた!」という自信がつき、保護者はつきっきりで教える時間から解放される。 「自分で楽譜が読めること」 をゴールに見据えていくと、きっと「え?こんな難しい曲も弾けるの?」と驚く日がくるはずです。